第154回講演会
- 日時 2019年6月15日(土) 14:00~17:00
- 講師 占部 浩一
今回の講演では、8つの項目に付き、考え方、理解の仕方について語られた。 どの項目も思考の訓練として興味深いものであった。
- 意味のある文章――矛盾という言葉に注意が必要。つじつまの合わない話になる場合に使うべきで、使用できるのは、議論の場に限られる。現実の問題の事象の記述に矛盾していると言えない。起きた事には理由がある。
- 鏡に映る像 ―― 鏡に映る像が左右逆か上下逆か、それ以外か、というのは実物と比較するときの視点による。鏡面の位置に視点を置き、実物方向と鏡面内部方向との奥行き方向を一致させたとして比較すると、見え方は像の移動(回転)のさせ方による。左右が逆であると表現できるように像を回転させることができるので、鏡に映ると左右が逆になると言っていい。
- 虚数はあるのか ―― 2乗して負数になるものと定義して別に不都合も生じないからあるといってよい。虚数を取り込んだ複素数を使うと便利なので使ってよいが、虚数がないと数学や物理が成り立たないわけでもない。もっと自由度を持たせた数をつくることもできる。ハミルトンの四元数というa+bi+cj+dk の形の数もある。
- 無限はあるのか――自然数はどこまで数えてもこれで最後という限界は無い、という意味で無限である。限りなく数え続けられる可能無限。ギリシャ時代から存在が認められた。19世紀終わりに実無限の概念が導入された。可能無限より個数(濃度)の多い無限である。
- 飛ぶ矢――ゼノンのパラドックス、飛んでいる矢は止まっている。飛んでいる矢もある瞬間を取れば止まっている。時間は瞬間の集まりなので矢は止まっている状態の連続だ、という話。動いているという為にはある時間が経過し、その間に位置が変化したことの確認が必要。瞬間の状態だけでは動いているのか静止しているのか判断ができない。
- 地平線近くの月の大きさ――月は天頂近くにある時は地平線近くにある時に比べて小さく見える。アリストテレス以来の疑問。多くの説有。屈折説、瞳孔散大説、水晶体扁平説…。視角が同じでも近くにあるものより遠くにあるものが大きく感じられるという説が有力。
- どこから禿といえるか――徐々に変化する現象を捉えて、あるところに境界を作ろうとすると恣意的なことになる。曖昧な過渡領域を作っておくのが良い。ハゲと断言せず、ハゲっぽいとか髪が薄いとかと表現する。
- ジレンマ(誰を殺すのがいいのか)―― 人を殺すことについての思考実験にトロリー問題が有名。 ブレーキの利かない路面電車が走ってきて、線路上に縛られた5人がいて、分岐線にも1人横たわっている。転轍機を切り替えて、5人を救えるが、分岐線の方の1人は救えない。切り替えは正しいのか。わが身と考えて自分は出来るか。
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