第163回講演会
- 日時 2020年5月16日(土)
- 講師 占部 浩一
今回は、テレビ会議システムを使って、自宅に居ながら講演を聴くという初めての試みを行った。
一部音声の接続に戸惑いもあったが、慣れれば簡単に使うことができ、臨場感あふれる議論を展開でき、成功裏に終わった。
講演自体は、数式やグラフを使った実証的なものであったが、平易な説明で遠隔のハンディを感じることなく、活発な質疑が行われた。主な論点を以下に示す。
- 地域によって温暖化したり、寒冷化したりしているところがあるが、平均すると100年で0.6度程度の温暖化が進んでいる。
- 気候変動にはまだ分からないことが多く、現在理由が分からなくても自然変動として受け入れるべきものがあるという説(赤祖父)がある。現在は1400~1700年頃の小氷河期からの回復の温暖化過程にある。それに人為起源の二酸化炭素による温暖化が重畳している。
- IPCC(気候変動に関する政府間パネル)では、小氷河期のことを無視して、20世紀からの気温上昇の原因を二酸化炭素に押し付けるので、二酸化炭素の寄与を過大に見積もることになっている。
- 二酸化炭素の温暖化への寄与を認めない人はいないが、1910~1940年の温暖化(二酸化炭素はあまり増えていない)と1940~1975年の寒冷化(二酸化炭素は急増している)についての納得の行く説明はない。
- 二酸化炭素増大について。メリットとしては植物の生育に寄与することがある。デメリットとしては温暖化への寄与の一部がある。温暖化により暮らしやすくなる地域もあるが、海面の上昇により陸地面積が減ったり、水没する島ができるかもしれないのはデメリットである。
- 二酸化炭素増大抑止について。有力なのは原発だが、制御不能の事故が生じる危険性があり、講師は採用したくない。海流、地熱などによる発電は研究の必要がある。太陽光、風力などによる発電は不安定なので蓄電技術が十分発達するまでは実用化は難しい。当面、化石燃料(石油、石炭など)による発電で二酸化炭素を排出するのもやむを得ないというのが講師の立場である。
- 温暖化に対しては、対症療法的な対策を行う。気候に合わせて作物の種類をかえる。海岸が後退したら、内陸に移動する。水没した島の住民は、国連が面倒をみて安全な土地に移動させる。等。
- フィリピンの火山の噴火で世界が冷やされたように、急速に地球を冷却する方法というのはあるのだが、そういうことを扱う気候工学も研究しておくべきである。倫理的、実務的にいろいろ問題になる点はあるが。